2023.12.20~21 横浜・東京旅行

12/20

 シンガポールのハードコアパンクバンド SIAL を見に横浜へ。
 LA VIDA ES UN MUSから出た1枚目のミニアルバムで出会い、以来ずっと追っていたバンドだから、日本でツアーすると知ったときは感無量だった。


 とはいえ当初は告知されたツアーの日程と仕事のスケジュールが中々嚙み合わず、観に行けない可能性が高くて焦っていた(日程が発表された時点で、名古屋のライブには行けないことがわかっていた)。仕事の予定が確定してから再確認したところ、横浜編ならば新幹線を使えば何とか行けることがわかった(新幹線を使うのは金銭面で正直躊躇したけど、一生後悔する可能性を考えたら安いもんだよね)。ライブ以外の予定をどうするか、(仕事から直接横浜へ行くにあたって)荷物や服装、帰りの交通手段をどうするか等、ああでもないこうでもないとずっと考えて、前々日にやっと行き帰りの交通手段を確定させた。

 当日は撮影を終え会社に戻り、できなかった仕事は全て後輩に押し付けお願いして(本当にごめん)、新幹線に飛び乗って横浜へ向かった。貧乏性なので、自分のお金でチケットを買った新幹線に乗っているのが変な感じだった。
 新横浜駅からブルーラインで横浜駅、そこから乗り換えて相鉄線で西横浜のエルプエンテへ。横浜の交通網は初めてなので、とても新鮮な気持ち。フリーターだった時に各地を旅行していたことを思い出す。旅行の醍醐味だ。
 初めてのエルプエンテは、駅からの近さ、外観の簡素さにびっくりした。インターネットのライブ写真で内装の雑然としているのは知っていたけれど、それに比べると対比がすごい。こんなところにスラッシュの聖地があるのか…

エルプエンテ外観

 SIALのライブは素晴らしかった。速くて激しいんだけど、すごくサイケデリックでトランスなハードコアパンク。モッシュするよりもガンガン横揺れして踊っていたくなる。各楽器のリズムの取り方がすごく好き。本当に観れて良かった。

SIAL from Singapore

 唯一残念だったのは、ライブ会場にシス男性(に見える)客しかいなかったこと。女性(の見た目をした)客は一人しかいなかった。元々日本のハードコアパンクのライブにはクィア・女性が少ないのが当たり前なのだけど、こんなにも女性がいないライブは初めてでちょっと驚いた。パンクの人ってシーンの多様性がどうとか言うけど、現状日本のハードコアパンクはぶっちぎりでホモソーシャルで単一的で風通し超悪い状態なので、どうしたらシス男性以外の属性の人たちが集まれる場所になるのか、真剣に勉強して考えたほうがいいと思いますよ…シーンの存続にも関わるし…

 ライブ直後、SIALのボーカルの人から「(写真を撮ってくれて)ありがとう」と言われた。実はその時日本語で話してくれたのが嬉しかった。簡単な日本語でも勉強して喋ってくれる姿勢は、その地域で生きている人間としてリスペクトされていると感じるし、反植民地的態度だと思う。もっと色々話したかったけど、シャイだからほとんど話さず帰った。実はドラムの人に、以前インスタグラムで交流があったことを話したかったんだけど、その人は大分前にインスタを辞めてしまったし、覚えてなかったら恥ずかしいから辞めた。
(余談だが、特に西欧からの観光客に対して思うこと。日本に来て、現在の円安と(先進国の給料に比べて)物価安の状況で、日本のエンタメ的側面だけ享受して帰るのは資本主義的かつ植民地的な態度だとわかってほしい。その状況を支えているのはこの国に住んでいる私たちの低賃金重労働だ。もちろん旅行だから楽しんで帰ってほしいけど、旅行先の文化や歴史、社会情勢について少しでも勉強してくれると嬉しい)

 横浜駅へ戻り、予約していたカプセルホテルへ。この頃宿泊所の価格も上がったような気がする。
お風呂に入って寝るまでコワーキングスペースで写真の編集をしようとしたが、なんとパソコンの電源を名古屋に忘れてしまった。。。しょうがないので就寝。

12/21

  ホテルをチェックアウト。この日の予定は、六本木のクマ財団の展示を見て、新宿イレギュラー・リズム・アサイラムに行き、その後友人とパレスチナ料理を食べ、夜行バスで名古屋へ帰る、という流れ。もし可能なら、まだ行ったことのないフェミニズム専門書店・エトセトラブックスに行けないかという目論見も。
 ひとまずPCの電源ケーブルを探しに横浜駅近辺の家電製品屋を回ったが、自分の必要な型番は廃盤になってしまったらしく、どこにもなかった。旅行中に写真を編集するのは諦めざるを得なかった。
 また、せっかくなので東京へ行く前に横浜の観光をしたかったのだけど、港や中華街などのザ・観光客向けのスポットしかないみたいだったので(もし他に何かあったらごめんなさい。アナ・フェミ系のオススメスポットがあったら教えてほしいです)、さっさと東京へ向かうことにした。永山則夫の小説に出てくる寿町にも興味があったけれど、時の経過と再開発で町の様相は既に変わっているようだったので、永山と同じ景色は見れないだろうと行くのはやめた。
 横浜滞在の最後に、横浜のお友達に教えてもらったビーガンカレー屋に行った。美味しかった。教えてくれてありがとう!またたくさんお話しましょう。

関東は商業施設の中にビーガン料理があってびっくりする

 電車で六本木のクマ財団ギャラリーへ。目当ては友人のドラァグクィーンMoche Le Cendrillon(ケルベロスセオリー)の映像作品「フェミニスト・キルジョイのためのワーク」。実はこの作品の中で、AWIを会場として使って頂いたのです。
 この作品は、サラ・アーメッドの著書「フェミニスト・キルジョイ」の読書会・ワークショップを記録したものとなっている。前半はZOOM上で行われたオンライン読書会、後半はAWIでのオフラインの読書会・ワークショップの様子が記録されている。まさに「個人的な政治的なこと」というフェミニズムのスローガンが体現されたような議論に溢れていてよかった。自分の周りでフェミニズムやセーファースペースに興味がある人は是非みんなケルベロスセオリーの展示を見に行ってほしい…入門にもとても最適なので。AWIでの映像もとても凝って撮影・編集されていて素晴らしかった。キルジョイのためのサバイバル・キットの中に「モノ」が紹介されているが、AWIの中にある「モノ」は、ZINEや本はもちろん、家具や道具の一つひとつにまで自分の信念が詰まっているので、AWIで撮ってくれたことがすごく嬉しい。

 このあたりで、数日間人込みの中で重い荷物を担ぎ続けた疲れが出てきたけれど、まだ時間に余裕があったため新代田のエトセトラブックスへ。新代田は都会感が減って、疲れも少し和らいだ気がした。
 初めてのエトセトラブックスはちょっと衝撃だった。流行りのフェミニズム人文書だけでなく、歴史・哲学・人文学・文学といった、あらゆるジャンルにおけるフェミニズムやクィアの本がたくさんあって、背表紙を眺めるだけでも興奮した。他にも、リトルプレスやZINE、エンパワーされるスローガンが書かれたステッカーやグッズ、クィアなスペースのチラシ、フェミサイドに反対するポストイットのコーナー等があって、いるだけで安心感と連帯を感じることができた。東京の中心部から離れた場所というのもあり、今まで行かずのままだったけれど、今後は東京に行ったら必ず行くであろう場所の一つになった。いくつか本とZINE、グッズを買って出た。

 休憩して新宿IRAへ。成田さんと色々世間話。旅行中なので多すぎる買い物は自制しないといけないのに、ここでもたくさん本やZINEを買ってしまった。。来年のスケジュール帳もゲット。

 IRAを出る数時間前に伊藤忠前でデモをやっているのを知ったので、外苑前へ。名古屋のデモは基本的に仕事と被って参加できていなかったので、初めてパレスチナのデモに参加した。というかデモに参加したのもおおよそ3,4年ぶりか…。久しぶりのコールは、最初は中々大きい声が出なかった。
「ラーメンからミサイルまで」とはよく言ったもので、総合商社はあらゆる商材を取り扱っている。コンビニを子会社に持ち、私たちが買わざるを得ない生活必需品まで取り扱っている総合商社には、中々ボイコットが効きづらいのが難点だ。腹ただしい。
 途中でフェミニストの友人と合流した。撮影禁止場所がわかりずらく、いても写真撮られたりしてちょっと不安を感じていたから、信頼している友人と合流できて安心した。自分が次の予定があった関係で短時間しか一緒にいられなかったけど、話したかったトピックも話せてよかった。お互いのエンパワメントトートバックを見せ合いっこしてお別れ。

 デモを離れて、別の友人たちと神田のパレスチナ料理店で合流。非常に楽しく、温かい時間だった。友人の一人が労働組合で運動をしているため、自分の前職のハラスメントについて色々意見やアドバイスをもらった。パレスチナ料理は初めてだったが、フムスなど自分の知っている中東料理があることに驚き(友人曰く、中東の国は地続きだから共有の料理があるのは普通らしい)。細かい名前を失念してしまったが、どれも美味しかった。アニスの効いたお茶が自分好みだった。

 料理屋を出て、少しだけ友人たちの写真を撮らせてもらってお別れ。そのまま東京駅から夜行バスに乗って名古屋へ帰った。寒さと安眠のために色々準備してたのだけど、帰りの夜行バスはとても暑くて中々寝付けず、しかも一番前の通路側の席だったため、休憩でSAに寄るたびに人にぶつかられて目が覚めてしまった。名古屋に着いてから暑い車内から突然真冬の路上に出されたのもかなり応えた。結局、後日風邪を引いてしまった。真冬の夜行バスは本当に考え物だと思った。

 以上、2023年12月の横浜・東京旅行記でした。遊んだり気にかけてくれた友人達ありがとう。

(all photo by me)